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大阪高等裁判所 昭和59年(ラ)173号 決定 1984年4月23日

再抗告人

井上義数

右代理人

金野俊雄

相手方

株式会社ミシマ

右代表者

三島護

主文

本件再抗告を棄却する。

再抗告費用は再抗告人の負担とする。

理由

一再抗告の趣旨と理由

別紙記載のとおり

二当裁判所の判断

民訴法三五六条一項にいう「民事上ノ争」には、現在の民事上の紛争のみならず、将来予想される紛争もこれに含まれると解されるが、しかし、将来予想される紛争は、当該事件の現在の具体的事実関係からこれを認定しうる場合であることを要し、単に同種契約において、世上屡々紛争が生じるという抽象的な虞れのみでは、いまだ右にいう将来予想される紛争があるということはできない。

原審認定の事実関係においては、いまだ将来予想される紛争を認めることはできないというべく、原決定に法令解釈の誤、法令違背があるということはできない。

したがつて原決定は相当であつて、本件再抗告は理由がないからこれを棄却し、再抗告費用は再抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(小林定人 坂上弘 小林茂雄)

再抗告の趣旨

原決定及び第一審決定を取消す

本件を大阪簡易裁判所に差戻す

との決定を求める。

再抗告の理由

(一) 原決定が民事訴訟法三五六条の「民事上ノ争」には将来予想される紛争も含まれるとするのはもとより正当であるが、その将来の紛争はその発生の可能性ないし蓋然性があることを以て足るものというべく、従つて原決定がその発生を予想させる具体的事実関係の現存を要するとするのは右法条の解釈を誤つたものといわなければならない。

(二) そして、本件土地使用貸借契約においては、約定期間満了ないし契約解除によつて発生すべき建物収去土地明渡請求権の実行は当事者間の合意のみでは不完全で殊に建物所有を目的とする土地の貸借においてはその使用目的ないし範囲の逸脱や約定期限後の居坐りも世上屡々見られるところであつてみれば右の意味における民事上の争いがあるものとして妨げないから、原決定の右法令違背がその決定に影響を及ぼすことは明らかである。

(三) よつてその取消を求めて再抗告に及ぶ。

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